• 検索結果がありません。

地球研要覧2016_日本語 | Part 3 研究プロジェクト・予備研究の紹介 予備研究(FS)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "地球研要覧2016_日本語 | Part 3 研究プロジェクト・予備研究の紹介 予備研究(FS)"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)
(2)
(3)

FS(機関連携型)

2014 2015 2016 FS1 FS2 FS3 ■主なメンバー 甲山  治 京都大学東南アジア研究所 岡本 正明 京都大学東南アジア研究所 伊藤 雅之 京都大学東南アジア研究所 内藤 大輔 京都大学東南アジア研究所 鈴木  遥 京都大学東南アジア研究所 杉原  薫 政策大学院大学/総合地球環境学研究所 佐藤 百合 アジア経済研究所 PAGE, Susan レスター大学地理学部 GUNAWAN, Haris インドネシア政府泥炭復興庁 SABIHAM, Supiandi ボゴール農業大学農学部 SETIADI, Bambang インドネシア政府技術研究応用庁 PONIMAN, Aris インドネシア地理空間情報庁 ■ FS 責任者 水野 広祐 京都大学東南アジア研究所 東南アジア、特にインドネシアに広がる熱帯泥炭地では、湛水状態の湿地林が維持され、全球の土壌炭素の約 20%にも及ぶ植物遺体が蓄積していると推定されています。 しかし、1990 年代以降、泥炭湿地は大規模な排水によりアカシアやアブラヤシなどが植栽され、プランテーション開発が急速に進行し、まさに開発のフロンティアとなり ました。そして、それは急速な泥炭の劣化と火災の頻発をもたらしています。本 FS は、フロンティア社会としての泥炭社会の特質を、その成立や生態的社会的脆弱性 に注目しながら明らかにします。そして、泥炭地火災による膨大な CO2排出(地球温暖化)、煙害による有害粒子状物質等の越境汚染と健康被害等の現地調査を 通じて、泥炭湿地林の破壊と住民生活への脅威という熱帯泥炭地問題に対処するため、乾燥泥炭地の湿地化や、パルディカルチュア(再湿地化した泥炭地にお ける農業や林業)などの現実的で地域に根差した解決策を提示し、その解決作の実行とそれにともなうさまざまな問題を解明することにより、問題解決に貢献す ることを目指しています。

熱帯泥炭地域社会再生に向けた国際的研究

ハブの構築と未来可能性への地域将来像の提案

なぜこの研究をするのか

泥炭地は排水により二酸化炭素を排出し沈下するとともに、乾燥 した泥炭地は極めて燃えやすく、毎年乾季には泥炭火災を頻発して おり、開発の拡大・深化により大規模な火災と煙害は加速的に深 刻化してきています。特に 2015 年の 7 月∼ 11 月にかけて、非常 に広範囲かつ高頻度の泥炭火災が生じ、2015 年 10 月中旬時点で、 インドネシアの 210 万ヘクタール(北海道の約4分の1)の面積で 火災が生じ、50 万人が上気道感染症と診断され、近隣国でも大き な問題になりました。火災による膨大な二酸化炭素炭素排出は、 喫緊の地球環境問題となっています。 私たちの提案である、乾燥荒廃泥炭地の湿地化と、泥炭湿地在 来樹種の再植は、今日、インドネシア泥炭火災と煙害を克服するた めの方策として、いわばインドネシア泥炭問題国際コミュニティにお いて解決策の柱として認識されました。昨年の大規模な泥炭火災を 受けて作られた泥炭復興庁は、5 年間で 200 万ヘクタールの再湿 地化と植林の目標を定めています。このように、インドネシア全土で 適応されつつあるこの方策が、真に泥炭火災と煙害をなくすことでき るまでには、まだ解決されなければならない問題がたくさんあります。 たとえば、国家管理地における見渡す限り乾燥し劣化した泥炭地を、 誰がどのように湿地化し、植林していくのかという問題、住民や企業 が意欲をもって再湿地化やその地で農林漁業を行なっていくために は、どのようなパルディカルチュアが望ましいのか、認証材を含んだ 住民に支持される樹種は何か、アカシアクラシカルパに変わるパル プ樹種は可能かという問題の検討、さらに、伐採・運搬(運河を使 わない方策)、加工、利用、販売についての革新が必要です。また、 これらの湿地化した泥炭における植栽が真に火災を防止するのかと いう問題を検討する必要もあります。このような問題を、地域住民や、 地元大学、泥炭復興庁、NGO、さらに多数の国際的な組織と手を 携えて研究し、解決策を実践していきます。

これからやりたいこと

強い脆弱性を持つ熱帯泥炭社会における住民主導のパルディカ ルチュアの発展と、泥炭地における企業によるモノカルチュア生産 活動のフェーズアウトをめざした泥炭保護区を拡大による泥炭社会 の変容可能性と将来像を提示したいと考えています。そのため、以 下の諸研究を実施します。泥炭水文統一マップの作成、持続的な 泥炭地利用を可能とする生業システムの確立、これを支える環境 ファイナンス制度、先住民族の土地権を含むコミュニティ研究、世 界泥炭政策史の研究や企業活動・統治に関する研究を通じて企業 モノカルチュア活動等の研究課題に取り組みます。 1) 泥炭層の厚さや水文を軸に、土地権や泥炭地利用・火災状況を 把握する泥炭水文統一マップの作成 2) 乾燥泥炭地の湿地化の方法と、認証樹種を含む在来樹種の植 林、泥炭火災予防効果の研究 3) 政府、関連企業や地域住民の泥炭地管理、泥炭火災予防に関 わる行動と戦略に関する研究 4) 煙害(ヘイズ)による有害粒子状物質等の越境汚染と健康被害 等の研究 5) 湿地化と植林、防火、健康被害対処への認証、REDD+ グリー ン債などの環境ファイナンス研究 6) パルディカルチュア実施に向けた先住民の土地権を含むコミュ ニティ研究 7) 企業モノカルチュア活動のフェーズアウトに資する世界の泥炭開 発史と法治と統治研究 フルリサーチでは、インドネシア泥炭社会での研究を深化させると ともに、マレーシア、さらにはペルーなどの泥炭地も比較の対象に 含めることで、各泥炭地域社会の今日の展開過程を相対化し、泥炭 研究の国際ハブの創設と泥炭社会の将来像の提示をめざします。 * 2016 年度 PR 移行予定(実践プログラム 1) 写真 1 環境林業省と共催で、2015 年 11 月 5・6 日にジャカルタにて、 関係政府機関、研究機関、NGO な どが参加する緊急泥炭火災全国セミ ナ ー「 イ ン ド ネ シ ア 煙 害 総 合 対 策 ワークショップ、問題処理と対処の 諸側面」を開催し、乾燥泥炭地の再 湿地化や再植林の意義と方法につい てさまざまな角度から議論した。 写真 2 火災防止のために本 FS と 地域住民が中心になり、泥炭地の排 水路に作成した簡易型ダム

(4)

FS(機関連携型)

なぜこの研究をするのか

ヒトが排出するし尿や排水を扱うサニテーションは公衆衛生、環 境・生態系管理に加え、物質循環・資源管理を左右する重要な要 素となります。世界では開発途上国の住民を中心に約 24 億人が 適切なサニテーションにアクセスできていません(2013 年、国連レ ポート)。また、これらの発展途上国では 5 歳以下の死亡率は高く、 貧困の問題も生じており、今後さらなる人口増加が予想されていま す。一方、日本等の先進国では、低経済成長・人口減少・高齢化 社会の進展により下水道などのインフラの維持が難しくなると予想 されます。 2050 年の世界人口は約 100 億人と推定されています。「人の健 康・環境負荷低減・食糧増産・資源管理の関係性の中で、100 億 人から排出されるし尿・排水をどう扱かえばよいか?」この問の答え が必要とされています。

これからやりたいこと

この問の答を得るために、次の3つの仮説を用意します:仮説 ①「住民の皆さんは地域特有の文化、価値、し尿に対する規範と 社会経済条件、環境条件の中に暮らしている。現状のサニテーショ ン問題は、住民やその集団の価値とサニテーションが提供する価 値の解離にある」。仮説②「一方、サニテーション技術はハード とそれを支える多様な関連主体、社会制度、ヒトのし尿等に対す る規範等によって成立している。このような技術の存立基盤と地 域特性のミスマッチも問題を深刻にしている」。仮説③「住民や その集団の価値を中心にすえ、技術の存立基盤とのマッチングを はかるサニテーション価値連鎖が解決策となる」。すなわち、本 プロジェクトでは先進国と開発途上国の共通の目標として、「価 値連鎖サニテーション」を提案します。 そして、この仮説の検証のために、3つの課題を設定します。 課題①ではサニテーションを地域の人びとの生活との関係で捉え なおします。現地調査により、住民の皆さんやコミュニティの価 値観、し尿に対する規範を知り、サニテーションを住民の皆さん の生活との関係で捉えなおします。課題②では、多様なサニテー ション技術をその存立条件の関係から捉えなおします。そして、 課題③では対象地域を選定し、サニテーション価値連鎖の提案と 共創の実証を行ないます。 公衆衛生・保健学、衛生工学、農学、経済学、社会学、人類学 の専門家でチームを作ります。 ■主なメンバー 池見 真由 北海道大学大学院経済学研究科 伊藤 竜生 北海道大学大学院工学研究院 牛島  健 北海道立総合研究機構 佐野 大輔 北海道大学大学院工学研究院 中谷 朋昭 北海道大学大学院農学研究院 鍋島 孝子 北海道大学大学院メディアコミュニケーション研究院 箱山富美子 藤女子大学 藤原  拓 高知大学農学部門 山内 太郎 北海道大学大学院保健科学研究院 SINTAWADANI, Neni

Research Center for Physics, the Indonesian Institute of Sciences

NYAMBE, Imasiku Anayawa University of Zambia

MAÏGA, Amadou Hama International Institute for Water and Environmental Engineering

■ FS 責任者 船水 尚行 北海道大学大学院工学研究院 先進国と開発途上国の共通の目標として、「サニテーション価値連鎖」を提案します。課題を抱える開発途上国と日本を対象に、個人の生きがい(Happiness) や健康、地域のし尿・排水に対する規範・文化・伝統・気候・農業・経済とサニテーションの関係を知り、サニテーションにかかわる価値連鎖の共創を めざします。「サニテーションは『価値』の創造である。単なる技術ではなく、ヒトや地域の価値連鎖そのものである」という視点を基本にします。

サニテーション価値連鎖の提案

─地域のヒトによりそうサニテーションのデザイン─

2015 2016 FS1 FS2 * 2016 年度 PR 移行予定(実践プログラム 3)

ᠾಅဃင

ǵ

ǵȋȆȸǷȧȳ̖͌ᡲᦋ

ͤ

ͤࡍ

ӓλ

᫢૰ȷ௿᫱

図1 住民の皆さんの価値連鎖にサニテーション価値連鎖を組み込む 47

(5)

FS プロジェクト

FS(個別連携型)

■主なメンバー 谷口 真人 総合地球環境学研究所 吉田雄一朗 広島大学大学院国際協力研究科 川田 恵介 広島大学大学院国際協力研究科 後藤 大策 広島大学大学院国際協力研究科 造賀 芳文 広島大学大学院工学研究院 今井  剛 山口大学大学院創成科学研究科 伊藤 高弘 神戸大学大学院国際協力研究科 豊田 知世 島根県立大学総合政策学部 伊藤  豊 秋田大学大学院国際資源学研究科 小松  悟 長崎大学多文化社会学部 山本 裕基 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科 佐藤  寛 アジア経済研究所新領域研究センター

Ram Prasad Dhital Alternative Energy Promotion Centre (AEPC), Ministry of Population and Environment (MoPE), Nepal

なぜこの研究をするのか

ネパールの山岳未電化地帯の女性や子供が1日何時間もかけて 急峻な傾斜を水汲みするような地域において、太陽光発電ポンプに よるコミュニティ給 水システム(SWPS: Solar Water Pumping System)の導入が試みられています。SWPS に対しては強い需要 があり、実際に導入された村では一定の便益がもたらされています が、普及にはいくつかの困難があります。ひとつは技術的な課題、 もうひとつは集団意思決定に関する課題です。技術的に大きな課 題は、それぞれの地域で地理的、水文学的条件と需要規模に応じ て毎回異なる技術設計が必要となることです。また、現在のシステ ムの基本構成は天候に大きく左右されるもので、給水サービスは安 定しません。太陽光で発電した電気はそのままポンプの駆動のみに 使われ、天候によって貯水タンクが溢れ続けることもあれば、何日 も空になってしまうこともあります。これに対して集団意思決定に関 する課題とは、コミュニティのどの範囲(何世帯)でまとまって給水 システム導入の検討をするか、初期費用はどう調達して、最終的に どのように負担するか、水量や利用時間などの割当て、維持管理方 法や費用負担を含めて導入された給水システムを使うルールづくり、 などの集団意思決定にかかる課題です。例えばネパールでは、これ まで水源を分けてきた複数のカーストが混在する村、地理的には村 を跨いで隣の村の一部住民と給水システムを導入した方が合理的な 村などでこうした困難が大きくなります。 本 FS では、これまでに研究を行なってきた SWPS の事例から 着想し、水とエネルギー供給を同時に達成するインフラ技術の技術 的課題、集団意思決定の課題をあわせて検討することによって、ど のように適用可能性を高めるかに挑みます。大きな研究課題は、技 術的なスケールメリットと社会的なスケールデメリットのバランスを 考えて最適な規模を明らかにすることです。最も困難な貧困地域で 普及可能な技術やその導入方法が確立されれば、他の地域の自然 資源の有効活用にとっても大きな影響を与えることが期待されます。

これからやりたいこと

本 FS では、途上国の条件不利な地域コミュニティにおいて導入 する再生可能エネルギーを利用した水とエネルギー問題を同時に改 善する技術の選択と導入のための意思決定プロセスに着目して、社 会的に望ましい技術システムの規模を研究します。具体的には、(1) 地域で活用できる資源賦存量の評価に基づく多様な複合技術シス テムの検討、(2) 水やエネルギー供給の改善によるインパクト評価、 (3) 文化・宗教・互恵関係・利他性と公共財の導入・維持管理のた めの社会的費用、について検討した結果を集約し、技術導入にお ける社会的な効率性を検討します。また、外部からの技術導入に 対するコミュニティ住民を含む利害関係者の協働のあり方について も研究対象とします。表1にあるように、本 FS ではネパールの山 岳民族、ミャンマーの湖上生活者、インドネシアの離島住民を対象 とし、比較検討することによってより一般性の高い結論を得ること をめざします。 ■ FS 責任者 金子 慎治 広島大学大学院国際協力研究科 再生可能資源の利用可能性を飛躍的に高めるためには、地域資源を有効に活用する分散型システムの技術とその望ましい適用規模が重要 な伴を握ると考えます。本 FS は、貧困に苦しむ途上国農村における水とエネルギー供給を同時に改善させるインフラ技術に着目し、技 術的、社会的、文化的な要因の中で最適な規模にとって何が重要かを理解した上で、現在の最適な規模をさらに小型化するための課題を 抽出します。

貧困削減のための小規模分散型システムにおける

水・エネルギー・ネクサスの社会的最適化

表1.研究対象地域 写真1 ネパール山岳地帯での水汲み 2016 FS1

(6)

2015 2016

FS(機関連携型)

■主なメンバー 市岡 孝朗 京都大学大学院人間・環境学研究科 市川 昌広 高知大学教育研究部自然科学系 大沼あゆみ 慶応義塾大学経済学部 敷田 麻実 北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 高橋  進 共栄大学教育学部

CHOY Yee Keong 京都大学大学院経済学研究科

馬奈木俊介 九州大学大学院工学研究院 山下  聡 徳島大学大学院生物資源産業学研究部 吉田 正人 筑波大学大学院人間総合科学研究科

なぜこの研究をするのか

地球上の熱帯雨林の多くが、不十分な管理のもとで今なお劣化・ 減少し続けています。残存する熱帯雨林を単に保護するだけでなく、 持続させるために、そこから価値が生み出せることを実証していくこ とが重要になります。その実現には、熱帯雨林の存在によって影響 を受ける地域住民の理解や協力、主体的な参加が不可欠ですが、 これまでは熱帯雨林から得られる長期的な利益を地域側が十分認識 できずにきたため、彼らの積極的な参加が得られてきませんでした。 森林伐採などで得られる金銭的利益は、短期的な経済効果は大 きいものの、環境を劣化あるいは破壊し、収奪的かつ非持続的な ものとなります。一方で、非金銭的利益は、可視化しにくく、短期 的な効果は小さいものの、文化の継承や人々の教育水準の向上、 生態系サービスの長期的な享受など、さまざまな形で波及的な効果 を生み出し、長期的には地域により大きな利益を生み出すことが考 えられます。 東南アジアの熱帯雨林保護地域では、これまで先進国が主体と なったさまざまなプロジェクトが実施され、既にかなりの知見の蓄 積があります。しかし、その成果を学術分野以外へ拡張し、地域 の長期的な利益の拡充に利用する具体的な設計ができていない状 況でした。 本 FS では、これら知的資源の評価と社会システムへの組み込み を通して、社会のさまざまな階層や所属の関係者が、熱帯雨林が 有する非金銭的利益の可能性を認識し、活用するしくみの構築に 取り組みます。そして、地域住民が主体となった持続的な熱帯雨林 の保全と利用のための枠組みの設計をめざします。

これからやりたいこと

単に熱帯雨林が保有する非金銭的利益といっても、その種類や 量、また効果の及ぶ時間や範囲などは、条件によってさまざまであ ることが予想されるため、まずはそれらを整理する必要があります。 そこで本 FS では、東南アジア熱帯雨林の大部分を所有するマ レーシアとインドネシアにおいて、森林の保全状況や、地域住民の 森林に対する意識、関わり合い、社会的な背景や歴史、現状での 生物多様性情報の集積状況、さらには金銭的・非金銭的利益の活 用状況などを調べ、それらの関係性や因果関係を解析します。 また、自然体験や環境教育などを含めた非金銭的利益の多くが、 短期的な効果よりも長期的な効果の発揮が期待されます。しかし、 東南アジアの熱帯域では、このような事例がほとんどありません。 そこで、日本やアメリカ、コスタリカなど、他地域での過去の事例 の検証やその後の追跡調査を通じて、非金銭的利益の中長期的な 効果を検証し、東南アジア地域での取り組みの将来像を予測します。 さらに、地域の利害関係者と協働し、複数の地域で保護地域が 保有する非金銭的利益の活用を通して、地域住民が主体となった 持続的かつ長期的な自然保護のあり方を探り、その枠組みを提示 します。 そして最終的には、非金銭的利益の効果的活用によって、熱帯 雨林から周辺地域にもたらされる波及的な効果を含めた、熱帯雨 林地域の新しい保全・利用モデルの提案をめざします。 ■ FS 責任者 市栄 智明 高知大学教育研究部自然科学系 東南アジアの貴重な熱帯雨林は、商業伐採や農地への転用など、短期的な利益獲得を目的とした土地利用により、近年急速にその面積が減 少し問題となっています。本 FS では、経済的利益だけが重視され、これまで見過ごされてきた、金銭では換算できない熱帯雨林の効果や 価値、「非金銭的利益」に注目し、新たな価値を生み出すための人材育成や環境教育、伝統的文化継承などの場としての可能性を探ります。 そして、地域の利害関係者が主体となって熱帯雨林を多面的に活用し、森林を持続的に保全していくための枠組みの構築をめざします。

東南アジアの熱帯雨林に埋蔵される知的資源の

効果的活用

─生物多様性がもたらす非金銭的利益─

図1 非金銭的利益の発生過程や形態 写真 1 タイ・サケラート保護林におけるエコツアー FS1 FS2 49

(7)

2016 FS1

FS(機関連携型)

なぜこの研究をするのか

自然環境破壊や環境汚染は、人間社会と地球環境の相互作用 がもたらす深刻な環境問題の一つです。特に、環境汚染は、局所 的な問題からグローバルでかつ多元的な問題へと深刻化しつつあり ます。特に、開発途上国は貧困問題を背景とする長期的かつ深刻 な環境汚染を抱えており、そのリスクを解消する有効な対策が実施 できていません。私たちは、このような自然環境破壊や環境汚染な どが住民の生活や健康へ影響を及ぼす高い環境負荷を抱える地域 を「高環境負荷地域」と呼んでいます。 本 FS では、この高環境負荷地域において、地域ステークホルダー が問題に自ら対処するための「地域イノベーション」(長期的に続く 環境負荷に対処して、持続可能な社会をステークホルダーと共に創 るための地域社会における幅広い変革)の成立可能性を明らかに します。また、この問題解決の核となる環境修復技術では、地域 の「在来知」に着目し、その活用メカニズムについて地域社会の組 織化の視点も交えて超学際的に考察します。また、地域イノベーショ ンが自律的に機能するための要素として「社会的受容性」(地域イ ノベーションが地域社会に受け入れられるための条件や程度を示す もの)に着目し、持続的な地域社会の成立にむけた諸条件につい て定量的・定性的の両面から明らかにします。

これからやりたいこと

上述の問題意識に基づいて、インドネシアのスラウェシ島におけ る小規模人力金採掘による水銀汚染に関して、以下の個別の課題 について研究します。 (1) インドネシア・スラウェシ島において多様な環境問題に積極的に 対応している地域社会組織の動態および社会的受容性に関する事 例調査研究を実施します。 (2) スラウェシ島における人力小規模金採掘地域の社会生態系シス テムの時間・空間的変遷を解明します。 (3) 人力小規模金採掘地域およびその周辺地域の各社会組織の動 態の特性を歴史・文化・地理的観点から理解し、トランスディシプ リナリー・アプローチに対するその社会的受容性を解明します。 (4) 地域ステークホルダーとの対話によって発掘した生態系サービス を活用する「在来知」と科学者の「科学知」とを統合し、持続可 能な環境管理能力を向上させる新たなイノベーションを共創すると 同時に、その成否について社会的受容性の観点から評価します。 (5)(1) ∼ (4) の成果に基づいて、研究対象地域における地域イノベー ションの社会的受容性メカニズムを解明します。 本研究プロジェクトが順調に進展した場合、いかにして開発途上 国の高環境負荷地域における地域社会と環境の相互作用環を正常 化し、ステークホルダーと共に持続可能な地域社会を共創するのか という問いに対して、トランスディシプリナリー・アプローチによっ て地域イノベーションを共創し、その地域社会組織の動的変容を解 明することが可能となり、この理論に基づく持続可能な政策の在り 方に関する提言を行う段階に到達できると考えられます。このよう に形成された理論は、プロジェクトにおける実践的な研究によって 裏付けられるものとなります。また、この手法は他の地球環境問題 への適用可能であり、その理論構築および事例研究が地球環境問 題解決に大きく貢献すると考えています。 ■主なメンバー 武部 博倫 愛媛大学大学院理工学研究科 世良耕一郎 岩手医科大学サイクロトロンセンター 西村 勝志 愛媛大学社会共創学部 若林 良和 愛媛大学社会共創学部、南予水産研究センター 田中 勝也 滋賀大学環境総合研究センター 古川 慎哉 愛媛大学医学部 畑  啓生 愛媛大学大学院理工学研究科 島上 宗子 愛媛大学国際連携推進機構 笠松 浩樹 愛媛大学社会共創学部 Mohamad Jahja インドネシア国立ゴロンタロ州大学 Yayu I. Arifin インドネシア国立ゴロンタロ州大学 Basri マカッサル健康科学大学 高倉 清香 常石造船(株) 山口  勉 エスペックミック(株) ■ FS 責任者 榊原 正幸 愛媛大学社会共創学部 本 FS では、開発途上国に特有な高環境負荷地域において地域ステークホルダーが自ら問題に対処するための地域イノベーションの成立可能 性を明らかにします。問題解決の核となる環境修復技術では地域の在来知に着目し、その活用メカニズムを超学際的に考察します。また、地 域イノベーションが自律的に機能するための要素として「社会的受容性」に着目し、持続的な地域社会の成立にむけた諸条件を明らかにします。

高環境負荷に対処する地域イノベーションと

社会的受容性

ἆἿὅἑἿ߸ỉᵦᶅᴾ ൲௨ẰủẺඕ߷൦ᴾ ϼྸẲẺỽἯἕἁጞዜᴾ ỽἯἕἁጞዜỆợẾề ᡢଢỆễẾẺඕ߷൦ᴾ ίඕ߷൦ɶỉᵦᶅຜࡇ ửᵑᵎᵃ˯ถὸᴾ ỽἯἕἁỉஙểẸỉټ໱ጞዜᴾ ᵟᵱᵥᵫỆợẾề൦᤼൲௨ẰủẺࡑ൦ ỉਤዓӧᏡễ෋҄ἉἋἘἲỉನሰᴾ ᬴ܱЭࢸỉỽἯἕἁỉᩓ܇᫋ࣇᦟϙჇᴾ ቬםቩ܇ᴾ ቬםቩ܇ᴾ ỽἯἕἁᴾίᵩᵿᶎᶍᶉὸὼ൦᤼൲௨ẰủẺ൦ỉ൦ឋોծὉૼእ஬ỉ᧏ႆᴾᴾ ṺỽἯἕἁᵆᵡᶃᶇᶀᵿᴾᶎᶃᶌᶒᵿᶌᶂᶐᵿᵇẆἣὅἶᅹỉᓳᓶ᭗ஙౡཋẆிҤỴἊỴỉౡཋ᝻เ ẐנஹჷẑᴾẐဃ෇ჷẑᴾ ṺἁἕἉἹὅẆ்ởݏφỉእ஬ểẲề෇ဇᴾ ᴾ ᴾ ᴾ ᴾ ᴾ ᴾ ᴾ ᴾ Ẑᅹܖჷẑᴾ ᴾ ᴾ ᴾ ᴾṺɶᆰᢿЎầ᩼ࠝỆٻẨẪ᠉ẟእ஬ᴾ ᴾ ᴾ ᴾ ᴾ ᴾṺ඗ԈӓỉೞᏡࣱᴾ ᴾ ᴾ ᴾ ᴾᴾᴾṺቬםቩ܇ở᣿ޓỶỼὅử൦ẦỤᨊӊᴾ ǫȩǛлƬƯጞዜǛ ӕǓЈƢ˺ಅ ǫȝȃǯጞዜƴǑǔ் ҄ܖጞዜƷ̅ဇƴǑƬƯ ્ూƞǕ᣼ဃ҄Ơƨǫȝ ȃǯƷౕ௎ ჷỉወӳᴾ ỽἯἕἁጞዜửь߻ẴỦૼእ஬ỉ᧏ႆᴾ ŨԈᔺ׹඗ԈბдƱƠƯƷೞᏡࣱ Ũ׍˳ᖩή஬૰ϋѼǫȝȃǯጞዜኡ Ტื߷˂ŴᲣ ˖ಅȷᄂᆮᎍᡲઃƴǑǔ ૼೞᏡእ஬Ʒ᧏ႆ ૼƨƳ࿢ؾငಅƷ࢟঺ ᨽဇƷоЈ 図1 地域ステークホルダーとの対話によって発掘した「在来知」と「科学知」とを統合 ᅈ˟ᅹܖᴾ ྸܖὉ࿢ؾᅹܖᴾ Ὁ߻ܖὉᠾܖᴾ ˖ಅᴾ ᵬᵮᵭᴾ ᵬᵥᵭᴾ ᵟᵱᵥᵫᤸޛᴾ і΁ᎍᴾ ᵤᵱὉᵤᵰᄂᆮᎍᴾ ૼẺễע؏ỶἠἫὊἉἹὅửσоᴾ ᧈ஖๛נ׹ἅἱἷἝἃὊἑὼᴾ ྵעἅἱἷἝἃὊἑὊᴾ ჷỉወӳᴾ ἋἘὊἁἭἽἒὊᴾ Ўௌᴾ ע؏ỶἠἫὊᴾ ἉἹὅỉᴾ ң΁ᚨᚘᴾ ң΁ܱ଀ᴾ ң΁੩̓ᴾ ע؏բ᫆ỉᴾ ྵཞ৭੮ᴾ ע૾ᘍ૎ࡅᴾ ؏բ᫆ỉ ע؏բ ע૾ᘍ૎ࡅ ᾐᾢᾖᾜע؏ỉٶಮễἋἘὊἁἭἽἒὊᴾ ᵟᵱᵥᵫᴾ ע؏˰ൟᴾ ᵟᵱᵥᵫᤸޛ נஹჷỉႆ੐ᴾ נஹჷỉႆ੐ᴾ ૨ྸᗡӳỉܖᨥᄂᆮểᅹܖჷỉσоᴾ 図2 本 FS プロジェクトのトランスディシプリナリティ

(8)

FS プロジェクト

2016 FS1

FS(機関連携型)

■主なメンバー 永田 尚志 新潟大学研究推進機構 満尾世志人 新潟大学研究推進機構 岸本 圭子 新潟大学研究推進機構 吉川 夏樹 新潟大学農学部 伊藤 亮司 新潟大学農学部 佐藤 康行 新潟大学人文学部 寺尾  仁 新潟大学工学部 山村 則男 同志社大学文化情報学部 ■ FS 責任者 本間 航介 新潟大学農学部 東アジアモンスーン地域に形成された水田̶森林複合景観(里山)の機能と維持管理システム、および社会経済的背景を多国間で比較し、類似した起源 を持つ里山が利用法や社会状況によって多様な形態に分化していくプロセスを明らかにします。里山を循環型生産形態の一つとして再評価し、大きく変 貌する消費者ニーズに対応しながら生物多様性維持機能や生態系サービスを維持していくための処方箋を提示することを最終的な目標としています。

東アジアモンスーン地域における里山水田景観の多面的機能の

評価と変動予測

─農村社会の変容に対応した新しい里山の創造にむけて─

なぜこの研究をするのか

東アジアモンスーン地域には世界人口の 40% 以上が集中し、今 世紀末にはさらに倍増すると予想されています。同地域では伝統的 農林業によって形成された水田 - 森林複合景観(いわゆる「里山」) が高い生物多様性と良質の生態系サービスを提供する基盤になって きました。東アジアの里山はもともと生産ポテンシャルの高い照葉 樹林に人為的な利用を加えることで成立した半自然生態系で、本来 は変化しやすい不安定な生態系を社会・経済的要請に基づく資源 管理によって「動的平衡」といわれる状態に人為的に保ってきたも のです。すなわち、人間の継続的かつ適切な利用が行なわれなけ れば、里山生態系は別の姿・機能を持った生態系へと変化を余儀 なくされます。 近年のアジア諸国における社会・経済的状況の激変や気候変動 により、従来の里山維持管理システムが立ちゆかなくなる事態が多 くなり、この傾向がより強まれば地球レベルでの生物多様性や自然 と関わる文化の損失となるであろうことは容易に予想されます。そこ で、本 FS では、東アジアの里山を統一的な手法により再評価し、 大きく変貌する消費者のニーズや農法の進歩に対応しながら、里山 の生物多様性や生態系サービスを維持していくための処方箋を提示 することを目標とした総合的研究を行ないます。

これからやりたいこと

東アジアモンスーン地域、特にヒマラヤ山脈南側からインドシナ 半島北部・中国南西部を経由して日本にいたる地域には、日華区系 (Sino-Japanese)と呼ばれるシイやカシを中心とした照葉樹林の 森がベルト状に広がっています。この地域は、稲作を中心とした里 山利用の発祥の地であり、「照葉樹林帯文化」と呼ばれる一連の文 化を日本に伝搬させる通路ともなりました。本 FS では、日本、韓国、 中国、ラオス、タイ、ネパールの 6 カ国の里山を調査しますが、特 に、稲作の起源に近く現在でも最も古典的な里山利用が営まれる ラオス北東部とタイ北部を重点エリアとして取り上げ研究を行なって いきます。この研究では1: 自然環境(特に物質循環)と生物多様性、 2:農法・森林施業・土地利用様式、3:社会・人口動態と資源 需要、の 3 層に分けた調査を行ないます。これら因子の相互関係 を分析・考察した上で東アジアの里山の近未来を予測するモデルを 作成するとともに、JICA や現地の生産団体、環境 NPO などと連 携した実践的研究体制により今後の予想される変化に対応するた めの具体的行動計画の策定に繋げていきます。 写真1 東アジアモンスーン地域の典型的な棚田−里山景観の例(ラオス北東部) ࠐफഎါ֦ ㎰ᴗ཰ධ ὶ㏻䞉㈍㊰ ฟ✌䛞䞉ほග཰ධ ᶵᲔ໬䞉㞟⣙໬ ODA ২ٛഎါ֦ġ ேཱྀືែ 䝷䜲䝣䝷䜲䞁ᩚഛ ஺㏻⥙ᩚഛ ㎰ᮧ䛾᝟ሗ໬ ᩍ⫱ ໲اഎါ֦ġ Ẹ᪘䞉᐀ᩍ Ẹ᪘㛫┦஫స⏝ 㣗ᩥ໬ ଽহഎါ֦ġ ከẸ᪘⤫἞ ᨻ἞యไ䛾ኚ໬ ᅜቃၥ㢟 ᆅ⌫⎔ቃၥ㢟 ચဩਏႅġ 䠄ཎ⏕⮬↛䠅 ฼ুடࠊ۷͈໦اġ ࠊ۷κΎͼ·㻌 ୆ఠࠏ΍ȜΫΑ㻌 ୆ॲႁȆ໤ৗ੏۪㻌 ুட၌ဥ਀༹ͬܰ೰̳֦ͥঊȪ২ٛڠȆࠐफڠȫġ ෠༹ స≀㑅ᢥ䞉F1✀Ꮚ ᱂ᇵἲ䞉᪋⫧ἲ 㜵㝖ἲ䞉⫱✀ ཰✭䞉ฟⲴ䞉ရ㉁⟶⌮ ༹ͬܰ೰̳̳ͥͥ ૩ႅঔުġ 㐀ᯘ䞉ಖ⫱ ேᕤᯘ⤒Ⴀ ⸄Ⅳᯘ᪋ᴗ ධ఍⟶⌮ କ၌Ȇཡबġ ⏝᤼Ỉ㊰䞉䛯䜑ụ ㎰ᴗ䝎䝮䞉◁㜵 ㊰⥙ᩚഛ ಖᏳᯘไᗘ ਓ్၌ဥġ ฼ऩ෽ै໤ġ বၳ࿐ġ ူॵġ ুட၌ဥȆۯၑ͈਀༹Ȫ෠ڠȆ૩ႅشڠȫġ ਜ਼؊എۯၑȆ෫౦ဲগġ ĩΕέΠρϋΟͻϋΈĪġ ட၌ ฼ুட୆ఠࠏ͈ġ ൲എ໹࣑͈෫౦ġ ฼ুட୆ఠࠏ͈་ا͂൲ఠထ௶Ȫ୆ఠڠȫġ ਜ਼؊ ĩΕ ฼ু ୆ 図1  里山のあり方を規定する 3 つの要素(自然環境・自然利用手法・社会経済) とその内包する因子 51

(9)

寺尾  徹 香川大学教育学部・ICEDS 中村 博子 香川大学教育学部・ICEDS 青木 高明 香川大学教育学部・ICEDS 三宅 岳史 香川大学教育学部・ICEDS 原  直行 香川大学経済学部・ICEDS 山田 道夫 京都大学数理解析研究所 青柳富誌生 京都大学大学院情報学研究科 藤原 直哉 東京大学空間情報学研究センター 和田 崇之 長崎大学熱帯医学研究所 中垣 俊之 北海道大学電子科学研究所 溝口 常俊 名古屋大学大学院環境学研究科 東   昇 京都府立大学文学部 奥貫 圭一 名古屋大学大学院環境学研究科 服部亜由未 愛知県立大学日本文化学部 中村  治 大阪府立大学人間社会システム科学研究科 瀬戸口明久 京都大学人文科学研究所 青木 聡子 名古屋大学大学院環境学研究科 藤原 辰史 京都大学人文科学研究所 竹本 太郎 東京農工大学大学院農学研究院 渡邊 裕一 日本学術振興会 島西 智輝 東洋大学経済学部 野間万里子 京都大学大学院農学研究科 小塩 海平 東京農業大学国際食料情報学部 上杉 和央 京都府立大学文学部 渡辺 和之 阪南大学国際観光学部 田中 丈裕 NPO 法人里海づくり研究会議

KHAN, Sayeedul Islam グラム・バングラ(バングラデシュ)

GLASER, Rüdiger フライブルク大学自然地理学研究所(ドイツ) MATHIEU, Jon ルツェルン大学歴史学部(スイス) ALFANI, Guido ボッコーニ大学政策科学部(イタリア) MOCARELLI, Luca ミラノ・ビコッカ大学経済学部(イタリア) GRULICH, Josef 南ボヘミア大学歴史学部(チェコ) MUIR, Cameron オーストラリア国立大学環境史研究センター PANJEK, Aleksander プリモルシュカ大学人文学部(スロベニア) BAO Maohong 北京大学歴史学部(中国) KNEITZ, Agnes 人民大学歴史学部(中国)  VADDHANAPHUTI, Chayan チェンマイ大学(タイ)・社会科学と持続的発展のための地域センター CAJEE, Laitpharlang ノースイースタンヒル大学地理学部(インド)

FS(機関連携型)

2016 FS1 ■主なメンバー

なぜこの研究をするのか

NaMAC サイクル(図1)という方法を確立し、前近代を起点に 現在の地域・地球環境を考え、将来を展望し、地域課題を解決し たいと考えています。前近代つまり近世から近代への移行を地域環 境史研究と数理地理モデリングに基づき詳述・解析し、地域社会 と世界の持続性に関して将来に向けた新たな可能性と方向性を示 し、実践的なアクションリサーチに結びつけることが必要です。 前近代の日欧比較研究を基軸にする理由は五つあります。第 1 に日本とヨーロッパは、世界でただ 2 カ所、「近世」を経験したユー ラシアの両雄であり、第 2 に両者は世界標準となる「一つの近代経 済」を生みだしたからです。第 3 に、世界の他の多くの地域は植 民地化されたか、グローバル経済に取り込まれ、短縮化された前近 代のみを経験することになりました。第 4 に、 Living Spaces ( どこ にすむ? ) としては、ヨーロッパは近世を残し、日本は近世を捨て 去るという全く異 なる道を歩 みました。 そして最 後 に、 この NaMAC サイクルに基づく日欧比較研究の成果は、アジア諸国そ の他の国々の将来にとって、構造化された有効な情報になりうると 考えるからです。

これからやりたいこと

社 会と自 然 の 地 域 環 境を理 解 するため の「 知 」 の 循 環を NaMAC サイクルと呼んでいます。このサイクルそのものが研究方 法です。たとえば、岡山県備前市日生町の里海プロジェクトのよう に魚が捕れなくなったという明確な地域課題を前提に、まずは、ナ ラティヴアプローチ(= Na)として、地域課題に関連した地域「環 境史誌」としての情報収集を進め、地域に関連する歴史資料分析 あるいはオーラルヒストリーから抽出された物語的資料ならびに数 量的データさらには既存の関連する歴史・地域・科学のデータベー スを活用し、情報の構造化を進めます。 数学・ネットワーク科学・地理情報システムの手法を駆使し、隠 れた繋がりを解きほぐします(数理地理モデリング = M)。ここから 得られた地域課題に関する構造化された情報群に基づき、地域住 民と研究者によるメンタルモデルや共有可能な指針の抽出に基づ き地域の課題解決をめざすアクションリサーチ(= A)を実行します。 このアクションリサーチは地域環境の価値共創を生み出しますが、 そのプロジェクトから排除される人々や自然も浮かび上がってきま す。住民の選択は本当に正しかったのか、本当に住民は地域課題 の解決のための方法が取捨選択できたのか。改めて住民目線によ るナラティヴ(物語と課題)の見直しが不可欠となります(ナラティ ヴチェック= C)。この NaMACサイクルを維持し改善することによっ てよりよい課題解決を実現したいと考えています。

■ FS 責任者 村山  聡 香川大学教育学部/ International Consortium for Earth and Development Sciences(ICEDS)

本 FS が対象とする地球環境問題は、ヒトと自然の分離、経済的には特に生産と消費の分離であり、その背景には、巨大な人口集積地域 の形成や高齢化社会の諸問題、人口減少における過疎化、生態系の激変があります。地域を限定した近世近代環境史研究を基軸に据え、 将来世代への倫理的責任を果たすことができるような方法論を確立し、ヒト・自然・地域ネットワークを再構築します。

ヒト・自然・地域ネットワークの再構築:

ナラティヴとアクションリサーチをつなぐ数理地理モデリング

ླྀ㏙䛸ᩘ⌮䜢䛴䛺䛠

NaMAC

䝃䜲䜽䝹 ᆅᇦ䛜┤㠃䛩䜛ㄢ㢟 ᆅᇦ䛻㛵㐃䛩䜛Ṕྐ㈨ᩱ ศᯒ䛚䜘䜃䜸䞊䝷䝹䝠䝇䝖 䝸䞊䛛䜙ᢳฟ䛥䜜䛯≀ㄒⓗ ㈨ᩱ䛚䜘䜃ᩘ㔞ⓗ䝕䞊䝍 ᆅᇦㄢ㢟䛻㛵㐃䛩䜛ᵓ㐀໬䛥䜜䛯᝟ሗ⩌ 䜘䜚䜘䛝ᆅᇦ⎔ቃ䜢 ⏕䜏ฟ䛩 䛂▱䛃䛸䛂⌮ゎ䛃䛸䛂ᐇ㊶䛃 NaMAC䝃䜲䜽䝹 ㄢ㢟䛻㛵㐃䛧䛯䚸 ᆅᇦ䛂⎔ቃྐㄅ䛃䛸䛧䛶䛾 ᝟ሗ཰㞟䜢䜑䛦䛩 䝘 䝘䝷䝔䜱䞂䜰䝥䝻䞊䝏 䠄Na) ᆅᇦఫẸ䛸◊✲⪅䛻䜘䜛䝯䞁 䝍䝹䝰䝕䝹䜔ඹ᭷ྍ⬟䛺ᣦ㔪 ᑟฟ䛻ᇶ䛵䛝䚸ᆅᇦ䛾ㄢ㢟ゎ Ỵ䜢䜑䛦䛩 䜰 䜰䜽䝅䝵䞁䝸䝃䞊䝏(A) ᆅᇦ⎔ቃ䛾౯್ඹ๰ ᩘᏛ䞉䝛䝑䝖䝽䞊䜽⛉Ꮫ䞉ᆅ ⌮᝟ሗ䝅䝇䝔䝮䛾ᡭἲ䜢 㥑౑䛧䚸㞃䜜䛯⧅䛜䜚䜢ゎ 䛝䜋䛠䛩 ᩘ ᩘ⌮ᆅ⌮䝰䝕䝸䞁䜾 䠄M䠅 㛵㐃䞉」║᝟ሗ䛾཰㞟 ᝟ሗ䛾ᵓ㐀໬ ᤼㝖䛥䜜䜛ே䚻䞉⮬↛ 䛸ఫẸ䛾㑅ᢥ ᪤Ꮡ䛾㛵㐃䛩䜛Ṕྐ䞉⎔ ቃ䞉⛉Ꮫ䛾䝕䞊䝍䝧䞊䝇 ླྀ㏙䠄≀ㄒ 䛸ㄢ㢟䠅䛾 ぢ┤䛧(C) 図 1 写真1 アドリア海に面するスロベニア・コペル(研究対象地の一つ)

(10)

2016 FS1

FS(機関連携型)

なぜこの研究をするのか

温暖化・降水の変化・海面の上昇・海洋の酸性化などをもたらす 気候変動は、人間社会のさまざまな機能に影響することが予測さ れ、世界中でその影響が出始めています。私たちは、気候変動の もたらす影響のうち、洪水・土砂災害・高潮などの自然災害に注目し、 自然災害リスクへの賢い適応を地域社会に実現したいと考えていま す。一方で、日本やアジアの多くの地域社会は、人口減少による担 い手不足の問題をすでにかかえているか、近い将来にその問題が生 じると予測されています。人口減少は、これまで集約的に利用して きた土地を、自然や半自然の粗放的な土地利用に見直すことがで きるチャンスでもあります。自然災害リスクは、ハザード(気象条件) と曝露(土地利用によってハザードに曝される程度)と脆弱性(影 響の受けやすさ)が組み合わさって発生しますが、土地利用の見直 しにより曝露を下げることで、リスク全体を低く抑えることが可能 です。生態系の多様な機能と恵みを活用しながら賢く防災減災する ことは、地域社会の持続可能性にとっても重要です。このような生 態系を活用した防災減災(Eco-DRR)を地域社会に実現すべく、 FS を進めます。

これからやりたいこと

Eco-DRR の考え方自体は国内外で認識されつつありますが、リ スクをどの程度低減できるのか、どのような多機能性を発揮できる のかといった定量的・総合的な評価や、地域社会での合意形成や 社会実装は進んでいない現状です。私たちは、地域社会の人びと が自然災害リスクを身近な問題としてとらえ、自然災害リスクへの 適応を具体的に検討し、リスク回避の行動を実行する一体的な解 決策を提示することをめざしています。具体的には下記の3つの研 究を行ないます。 1.自然災害リスクの見える化 洪水・高潮・土砂崩れなどの自然災害ハザードに、土地利用の曝 露情報と影響の受けやすさの脆弱性情報を加味して、自然災害リス クを評価し地図化します。また、過去から現在までの自然災害リス クの変化も明らかにします。FS では、その方法論を開発してモデ ル地域で試行します。 2.Eco-DRR の総合的評価とシナリオ分析 Eco-DRR による防災減災効果に加えて、多様な生態系サービス (自然の恵み)も考慮し、Eco-DRR の総合的な評価を行います。 また、人口減少にともなう土地利用見直しのシナリオ分析を行ない、 将来像を示します。FS では、総合的評価を試行します。 3.地域社会での Eco-DRR 利用の協働実践 上記2つの研究成果を活用しつつ、Eco-DRR 利用の合意形成 と社会実装を、モデル地域の多様な主体と協働して実践します。そ の際には、伝統的な土地利用や古くからの地名など、自然災害リス ク回避の伝統的知恵を整理して活用します。FS では、モデル地域 との連携体制の構築を進めます。また、Eco-DRR 利用の経済的 インセンティブとして災害保険に注目し、損害保険業界との連携を 進めます。 ■主なメンバー 一ノ瀬友博 慶應義塾大学環境情報学部 伊藤 元己 東京大学大学院総合文化研究科 内田  圭 東京大学大学院総合文化研究科 浦嶋 裕子 MS&AD インシュアランスグループホールディングス株式会社 加藤 禎久 岡山大学グローバル人材育成院 菊地 直樹 総合地球環境学研究所 倉島  治 東京大学大学院総合文化研究科 香坂  玲 金沢大学人間科学系 齊藤  修 国連大学サステイナビリティ高等研究所 佐藤  哲 総合地球環境学研究所 柴崎 亮介 東京大学空間情報科学研究センター 谷口 真人 総合地球環境学研究所 土屋 一彬 東京大学大学院農学生命科学研究科 長井 正彦 東京大学空間情報科学研究センター 橋本  禅 東京大学大学院農学生命科学研究科 原科 幸爾 岩手大学農学部 古田 尚也 国際自然保護連合・大正大学地域構想研究所 古米 弘明 東京大学大学院工学系研究科 松葉史紗子 東京大学大学院農学生命科学研究科 馬奈木俊介 九州大学大学院工学研究院 丸山 康司 名古屋大学大学院環境学研究科 宮内 泰介 北海道大学大学院文学研究科 宮崎 浩之 東京大学空間情報科学研究センター 宮下  直 東京大学大学院農学生命科学研究科 村上 暁信 筑波大学システム情報系 森  照貴 東京大学大学院総合文化研究科 八木 信行 東京大学大学院農学生命科学研究科 八木 洋憲 東京大学大学院農学生命科学研究科 山路 永司 東京大学大学院新領域創成科学研究科 鷲谷いづみ 中央大学人間総合理工学科 ■ FS 責任者 吉田 丈人 東京大学大学院総合文化研究科 洪水・高潮・土砂災害などの自然災害は、気候変動にともない増加しつつあり、自然災害リスクへの適応が地域社会に求められています。一 方で、多くの地域社会が人口減少の問題に直面しています。私たちは、生態系がもつ多機能性を活用する防災減災(Eco-DRR)に注目し、人 口減少で土地利用の見直しが可能になる機会をとらえ、豊かな生態系の恵みと防災減災が両立する地域社会の実現に向けて FS を実施します。

人口減少時代における気候変動適応としての生態系を

活用した防災減災(Eco-DRR)の評価と社会実装

ঁ२شॻ ᓄ່ জ५ॡ

জ५ॡ ঁ२شॻ¼ᓄ່¼ᒤൠਙ

قHJဏ਷ك قଅ৉ਹ৷كقHJ૦੟भଡୗك

প

প

৵ ৵ ৵ ৵

েଙ௺॑ણ৷खञଆ಼੖಼ق(FR'55ك



図 1  生態系を活用した防災減災(Eco-DRR)では、ハザードの高い場所での人間 活動の曝露を小さくし、ハザードの低い場所で人間活動を行なうことで、災害 リスクを減らしつつ、生態系の豊かな恵みを利用できます。 53

(11)

photo/ 大石 高典 (狩猟採集民バカのキャンプには、狩猟のための犬がかかせません カメルーン東部州 2015年)

参照

関連したドキュメント

3 Numerical simulation for the mteraction analysis between fluid and

大谷 和子 株式会社日本総合研究所 執行役員 垣内 秀介 東京大学大学院法学政治学研究科 教授 北澤 一樹 英知法律事務所

Mochizuki, Topics Surrounding the Combinatorial Anabelian Geometry of Hyperbolic Curves III: Tripods and Tempered Fundamental Groups, RIMS Preprint 1763 (November 2012).

Kambe, Acoustic signals associated with vor- page texline reconnection in oblique collision of two vortex rings.. Matsuno, Interaction of an algebraic soliton with uneven bottom

るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP

【 大学共 同研究 】 【個人特 別研究 】 【受託 研究】 【学 外共同 研究】 【寄 付研究 】.

山本 雅代(関西学院大学国際学部教授/手話言語研究センター長)

関西学院大学産業研究所×日本貿易振興機構(JETRO)×産経新聞